人生で一番美味しいもの*

NEWS沼に落ちました。ジャニーズハロプロ(在宅)から艦これ、その他日常のこと。

さくらガール~「テゴマスのまほう」がとけるとき

「テゴマスの青春」に続き「テゴマスのまほう」DVDを観た。

「青春」とは全く異なったコンセプトのライブであり、アイドルとしてのテゴマスを存分に楽しめる作品だった。そのセットリストの中で、特別な意味を持っていたであろう「さくらガール」について自分なりにまとめておきたい。

 

前提として、この3rdツアーはNEWSから2人の脱退が発表されてから約2週間後にスタートしたものだった。それまでテゴマスではNEWSの曲を歌わない、というスタンスであった二人が、何か一曲歌おうとなったときに「さくらガール」で一致したそうである。後に手越氏はこの時のことを振り返って「あれは俺たちの弱さだった」と語っているが、当時先行きの見えなかったNEWSについて、彼らは何を思いながらこの曲を歌ったのだろう、と考えながら見ていくと非常に感慨深い。

 

さて、「テゴマスのまほう」はその名の通りファンタジーな世界観が全面に押し出されており、会場の注意事項アナウンスから、「音を捕まえる」といった演出まで、細かく作りこまれた、まさにザ・アイドルコンサートといえる公演である。

アルバムリード曲「魔法のメロディ」から始まり、緩急織り交ぜながらテゴマスの「まほう」が展開されていくなか、二人がアカペラで歌い出す「はなむけ」という曲がある。

「さくらガール」のひとつ前に歌われたこの「はなむけ」、結婚する二人に送る歌なのだが、偶然か必然か、NEWSを去った2人へ送るメッセージのように感じられる。

 

「始まりの鐘が鳴って 長い道歩き出した 永遠の喜び願うよ」

「心から想い込めて 贈りたい はなむけのうたを 二人に」

 

沢山の花に飾られたリフターに乗って歌うテゴマス。曲が終わると、リフターから降りた二人はゆっくりと歩きながらセンタステージへ戻り、向かい合う。

この「はなむけ」と「さくらガール」の曲間、会場は無音で、ただ移動する二人がうっすらと浮かび上がるだけだ。このシーンは、ここまでの曲と曲の繋ぎに比べると、とても異質に感じられる。それまでの、テゴマスの素敵な「まほう」が急にとけてしまったような、そんな風にも思えた。

 

「さくらのような 君でした 春のような 恋でした いつまでも 続いてゆくと そんな気がしてた」

「風が吹いて 散るように はらはらと 散るように あの風が 連れ去ってゆく」

「舞って 舞って 僕のさくら」

 

それまでお互いに背を向けて、ファンへ歌いかけていた二人が、見つめ合って歌い出す。Aメロを歌う増田さんを後目に、手越氏が顔を歪めているのがはっきりと映ったかと思うと、そこからどんどん歌声が叫ぶようなものになってゆく。二人とも向き合ったり、客席へ向いたりするものの、視線はどこか遠くを見ているようで、ひたすら自分に問いかけるような、苦しくなるような歌が響く。

そして、最後にもう一度サビを歌い始めた時、そこにはもうテゴマスの「まほう」どころか、「テゴマス」すら居ないように思えた。アイドルではなく、ただの「手越祐也」と「増田貴久」が、体の底から絞り出すような声で泣いているのではないかと感じるほどだった。

 

少し話は逸れるが、私は増田さんについて「物語の語り手として」歌を届けるタイプだと常々思っている。あまり歌詞の中に入りこまず、歌の世界観を俯瞰している印象があった。そんな彼が、こんなにも感情的に歌っているというのが本当に衝撃で、胸を打たれる思いだった。

 

増田さんが比較的表情を変えず歌っているのに比べ、見ているこちらが辛くなるほど、手越氏の苦しそうな表情が何度も映される。「さくらガール」は力強い「さくら」というフレーズで終わり、次の「夕焼けと恋と自転車」へ続く。

この曲は後の4thツアー「テゴマスの青春」でもセットリスト終盤で歌われており、ラストスパートにふさわしい、明るくて少し切なげなメロディーが耳に残る曲だ。しかしこれもまた「さくらガール」に続く流れで見ると、色々と考えさせられてしまう。

 

「夕焼け空に向かって どこまでも走っていくんだ 君のことを あきらめるまで」

 

この最初のフレーズが、とにかくエモーショナルに歌い上げられる。二人とも強く拳を握っている。「さくらガール」を歌ったこと自体が「4人でもNEWSを続けていく」という意志表示だった、と手越氏は語っていたが、この曲はその決意を歌っているように聞こえてくるのだ。

どうにかして6人でやれなかっただろうか、何か出来ることがあったんじゃないか、そんな思いを抱えながら、それでも4人でやっていく。この時はまだ2人のことを諦められていなかったかもしれないテゴマスが、「あきらめるまで」と歌ったその時、何を感じたのだろうか、と思いを馳せずにはいられない。

実際「テゴマスだけを続ける」という選択肢も挙がっていたなかで、この曲が最初から「決意の歌」として「さくらガール」の直後に置かれたとは考えにくい。しかし、少なくともこの公演においての「夕焼けと恋と自転車」には、NEWSもテゴマスも残していきたい、という意志がはっきりと現れていたように思えた。

 

その後「Over Drive」で客席を煽りながら、ラストは「青いベンチ」で爽やかに幕を閉じる。アンコールでは再びキラキラしたテゴマスが、会場全体を幸せで包む。「さくらガール」でとけてしまった「まほう」が、いつの間にか戻ってきていることに気付かされた。

 

改めてセットリスト全体の流れから見ても、「さくらガール」「夕焼けと恋と自転車」はやはり浮いているように思えてしまう。「まほう」とはほど遠い、余りにも感情的でリアルを感じさせるような空気がそこにはあった。「まほう」をかけたはずのテゴマスは、自ら「さくらガール」でその「まほう」をといたのかもしれない。

(考えすぎかもしれないが、アンコールの際にファンにペンライトを使って「まほう」を使わせ、テゴマスを呼ぶという演出があった。でも、会場のアナウンスで「テゴマスのまほうがとけちゃうよ」と言われたように、既に「魔法のメロディ」で会場は「まほう」にかかっていたはずなのだ。再度「まほう」をかけたということは、実は「まほう」がとけてしまっていた、という暗示だったのかな、などと思ってしまう。)

 

 

「weeeek」や「恋のABO」が4人のNEWSの曲として歌われていくなかで、「さくらガール」だけは、6人のNEWSがいたことを証明するかのように、特別な切なさをいつまでも残しているような気がする。そんな「さくらガール」をこれからの彼らが笑顔で歌い続けてくれることを願ってやまない。